経歴
長野県南佐久郡南相木(みなみあいき)村診療所長、内科医、NPO「佐久地域国際連帯市民の会(アイザック)」事務局長。
60年神奈川県横浜市生まれ。
東京大学中退後、世界を放浪し、医師を目指し京都大学医学部へ入学。
90年同大学卒業後長野県厚生連佐久総合病院、京都大学付属病院などを経て長野県南佐久郡南牧(みなみまき)村野辺山へき地診療所長。
98年より南相木村の初代診療所長となる。外国人HIV感染者・発症者への「医職住」の生活支援、帰国支援を行うNPO「アイザック」の事務局長としても活動を続ける。
こうした活動により95年、タイ政府より表彰を受ける。
現在、長野県東南部、人口1300人の南相木(みなみあいき)村(鉄道も国道もない山の村)で家族5人で暮らしている。
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message from 色平 哲郎
「混合診療解禁でおこる患者の悲劇」ほか、ボストン在住の李啓充ドクターによる新聞連載です。この「見過ごせない日本の医療改革 規制改革・民間開放推進会議の嘘」連載3日分を、筆者と媒体(「日刊ゲンダイ」 http://gendai.net/)の許可を得て掲載します。
@「混合診療解禁でおこる患者の悲劇」李啓充04年12月14日「日刊ゲンダイ」
200X年のある日、あなたは大腸がんと診断される。すでに転移が進んでいるので、手術には手遅れだが、延命効果が期待できる新薬があると、医者は言う。
「でも、この薬には保険がきかないので、薬代がひと月に150万円かかります。混合診療が禁止されていた時代には未承認の薬を使おうとしたらすべての医療費を自己負担しなければならなかったのですが、04年末に、規制改革・民間開放推進会議と小泉首相が頑張ったおかげで、今は、薬代だけ自己負担すればよくなったんです」と医者は説明する。
ひと月でもふた月でも長く生きたいと、あなたと家族は毎月150万円の薬代を工面する。幸い治療は奏功、腫瘍の増大は止まった。
しかし、一年近く、無理をして毎月150万円の負担を続けてきたが、ついにお金がつきる日がやってきた。
「お気の毒ですが、お金が払えないのなら、もうこの薬を続けることはできません。アメリカだったら保険がきく薬なのですが・・・」と、医者は済まなそうに言う。
「命にかかわる薬なのに保険がきかないなんて、今まで何のために何十年も保険料を払ってきたのだ」とあなたはほぞを噛む。
「命の沙汰も金次第」という言葉が胸にぐさりと突き刺さる・・・。
以上、混合診療解禁後の近未来を想像したが、「ひと月150万円の抗癌剤」は決して誇張ではない。今年はじめ、米国で大腸がん治療薬として認可された新薬の実際の値段である。
しかし、米国ではこの薬に保険がきくので、患者は、保険にさえ入っていれば薬代について心配する必要はない。混合診療解禁派は、混合診療が解禁されれば、日本で未承認の最新の抗癌剤が自由に使えるようになると宣伝するが、実は、自由に使うことができるのは財力がある人に限られるのであって、決してすべての人が自由に使えるようになるわけではない。
患者が新薬の薬代の心配などしなくともいいよう、保険診療の一層の充実を可能とする制度を目ざすことこそが改革のめざすべき方向であるはずなのに、混合診療解禁派は、日本の医療を保険がなかった時代に逆戻りさせようとしているのである。
A「混合診療解禁でおこる保険診療の空洞化」 李啓充04年12月15日「日刊ゲンダイ」
前回に続き、混合診療解禁後の近未来を予測する。
201X年のある日、あなたは、主治医から、脳血栓のリスクを劇的に減らす新薬を勧められる。
血圧とコレステロールが高いのは親譲り。両親とも脳血栓で倒れ、介護が必要な身となっている。あなたにとって願ってもない薬だ。
「でも、保険は使えないので、ひと月の薬代に30万円かかりますよ」こともなげに主治医は言う。
05年に混合診療が全面解禁となった後、新薬に保険が使えないのは当たり前になっていたので、あなたは格別驚きもしない。ただ、自分の収入ではとても手が出ないと思うと、出るのは溜息ばかりだ。昔は、保険適用が認められない薬は市場に出せなかったので、製薬会社は新薬の承認を得るために、コストや手間をいとわず臨床試験に励んだものだ。
しかし、混合診療が全面解禁になった後は、自由診療で使う薬として「言い値」で売った方が得だから、製薬会社は保険適用を求める努力などしなくなってしまったのだ。その結果、「新薬はよく効くが価格が高く、保険も使えない」ことになり、保険が使える薬は「効き目が劣る」古い薬ばかりになってしまった。
薬だけではない。心筋梗塞の治療にしても、保険が使える治療と使えない治療では、5年後の死亡率が5倍以上違うという。会社の役員たちは自由診療分をカバーする民間の付加保険に入っているので、どんな最新の治療も自己負担なしに受けられる。金持ちに手厚い米国の競争社会をまねて、重役の民間保険料は会社持ちだ。しかし、中間管理職のあなたは違う。
混合診療が解禁される前、日本の医療保険制度は世界一とWHOもお墨付きを与えていた。ところが、公的保険で受けられる診療は時代遅れのものばかり。こういう時代になるのは間違いない。
B「株式会社病院の恐ろしさ」 李啓充04年12月16日「日刊ゲンダイ」
株式会社が大々的に病院チェーンを展開しているのは世界中でアメリカだけだ。株式会社が病院経営をしたらどうなるのかは、米国の例を見ればよい。
アメリカ最大の病院チェーン、HCA社は、保有病院190、年商2兆2000億円、粗利益1310億円(03年度)という超巨大企業である。
巨大チェーン構築の立役者、リチャード・スコット(前CEO)は、最初に所有した2病院の経営を立て直すために、競争相手の病院も買収、そこを閉鎖したことで知られる。HCA社はこうした強引な手法で全米にチェーンを拡大した。競争相手を買収してまで潰すのは、そうすれば市場を寡占でき、「言い値」で商売ができるからだ。
全米第2の病院チェーン、テネット社(年商1兆3000億円)の場合、入院患者1人当たりへの請求額は他の病院より63%も高いことがカリフォルニア州の調査で明らかになった。
株式会社病院の問題はまだある。
デューク大学フランク・スローン教授によると、1984年から95年の間に非営利から株式会社に経営が変わった133病院を調査したところ、株式会社に変わった後の1-2年で入院患者の死亡率が2倍近くに増えたという。
利益を優先するあまり、病院チェーンが違法行為に手を染めることも珍しくない。最近では、02年に、健康な患者多数に心臓手術を施行した疑いでテネット社の病院がFBIの取り調べを受けた。
02年、HCA社は組織ぐるみの診療報酬不正請求を認め、罰金1000億円に加え、不正請求返還分7500億円を米政府に支払うことで示談した。
日本の医療の規制緩和が進めば、混合診療解禁の次は病院の株式会社化が現実になろう。在日米国商工会は「株式会社の病院経営参入早期実現」を日本政府に申し入れている。アメリカの巨大病院チェーンが、巨額の資本力で日本の医療市場を制圧する日が近づいている。
健康な人の心臓をオペして、不正請求? 以上は、怖ゎーい、近未来のSF話、ホラ話・・・?
「いのちが惜しくば、金を出せ」「家族を助けたいなら、金を出せ」げっー、金持ちしか救われんぞ・・・こりゃ、医療じゃない! 強盗?誘拐?拉致「換金」? だとすると、政府説明は、おためごかしもいいところだ 怒りの気持ちが湧いてきた。
本なら「患者見殺し 医療改革のペテン 年金崩壊の次は医療崩壊」(光文社、1000円)が、ビデオならハリウッド映画「ジョンQ−最後の決断」(2002年)がお薦め。
皆様一人ひとりにとって、よりよき2005年を! 2004年12月17日 信州にて いろひら拝